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底辺といわれる介護職と高齢者人口と介護需要について

2024年の総務省の統計によれば、日本の総人口の約29.3%が65歳以上を占め、高齢化が進む一方で、介護職に従事する人材は不足している現状が見られます。また、介護職は底辺というイメージが強くこれは複数の要因が重なって生じていると考えられます。

高齢者の人口数位について

2024年の高齢者数と総人口に対してのパーセンテージ

総人口65歳以上65歳以上うち75歳以上
総人口(万人)12376万人3625万人2076万人
男(万人)6022万人1572万人830万人
女(万人)6354万人2053万人1246万人
総人口に占める割合29.3%16.8%

出典:統計トピックスNo.142 統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-

2024年の総務省の統計によると総人口に占める高齢者(65歳以上)人口の割合は29.3%と過去最高となり、高齢者人口を見ると、75歳以上(後期高齢者)人口は2076万人となっている。

介護保険対象者とサービス利用者の増加について

介護保険制度は、制度創設以来22年を経過し、65歳以上被保険者数が約1.7倍に増加するなかで、サービス利用者数は約3.5倍に増加。高齢者の介護に無くてはならないものとして定着・発展している。

①65歳以上被保険者の増加

2000年4月末2022年3月末22年間の倍率
第1号被保険者数2,165万人3,589万人1.7倍

②要介護(要支援)認定者の増加

2000年4月末2022年3月末22年間の倍率
認定者数218万人690万人3.2倍

③サービス利用者の増加

2000年4月末2022年3月末22年間の倍率
在宅サービス利用者数97万人407万人4.2倍
施設サービス利用者数52万人96万人1.8倍
地域密着型サービス利用者数89万人
149万人516万人※3.5倍
※ 居宅介護支援、介護予防支援、小規模多機能型サービス、複合型サービスを足し合わせたもの、並びに、介護保険施設、地域密着型介護老人福祉施設、特定施設入居者生活介護(地域密着型含む)、及び認知症対応型共同生活介護の合計。在宅サービス利用者数、施設サービス利用者数及び地域密着型サービス利用者数を合計した、延べ利用者数は592万人。

出典:社保審-介護給付費分科会 第217回(R5.5.24)【介護分野の最近の動向について】より

高齢者人口の増加と介護サービス需要について

日本における高齢者人口の増加と、それに伴う介護サービス需要の急拡大は、以下のような理由が複合的に絡み合っていると考えられます。

平均寿命の延び

日本では平均寿命が延びており、より多くの人が高齢期を迎えています。さらに、医療技術の進歩や生活水準の向上により、長寿化が進むとともに、後期高齢者(75歳以上)の割合が増加しています。高齢になると、身体機能の低下や認知機能の変化が現れやすくなり、日常生活の中で継続的な支援が必要になるケースが増えています。

核家族化と都市化による家族介護力の低下

日本の家族構成は核家族化が進んでおり、かつては同居家族による介護が主流でしたが、近年では高齢者が独居または夫婦のみで生活するケースが増えています。これにより、家族による支援だけでは高齢者の生活を支えきれず、外部の介護サービスが必要とされることが多くなりました。また、都市部への人口集中により、離れて暮らす子ども世代が親の介護を直接行うことが難しいことも、介護サービス需要の増加につながっています。

介護保険制度の普及と利用者層の拡大

2000年に介護保険制度が導入されたことで、介護サービスを利用するハードルが下がり、介護が必要な人が社会保険でサポートを受けられる仕組みが整備されました。当初は制度を活用する人が限られていましたが、制度の認知度向上とともに利用者が急増し、サービスの需要も右肩上がりになっています。また、要介護・要支援認定を受ける人が増えたことにより、施設や在宅介護のサービス提供者が不足している現状に拍車がかかっています。

労働力不足と地域格差

介護の需要が特に多いのは、過疎化が進んでいる地方地域が多いのですが、そうした地域では若年層が少なく、介護職の確保が困難な状況です。また、介護職への関心が低い若年層も多く、都心部と地方での人手不足の格差が拡大し、地方ではサービスが十分に行き渡らないケースが見られます。

要介護度の高い利用者の増加

高齢者人口が増えるだけでなく、高齢化が進むにつれて要介護度の高い人が増加しています。特に後期高齢者になると、認知症や重度の身体障害を抱える割合が増えるため、介護サービスの需要は単純に人数が増える以上に、支援の質や専門性が高いサービスが求められるようになっています。

高齢者人口の増加と介護サービス需要についての結論

高齢化の進行とそれに伴う介護サービス需要の増加は、平均寿命の延びや社会構造の変化、介護保険制度の普及などが要因となっていますが、今後も高齢者の増加が見込まれるため、介護人材の確保や労働環境の改善が急務となっています。このままでは、介護を必要とする高齢者への支援が十分に行き届かない可能性があるため、社会全体での取り組みが求められています。

なぜ、高齢者が増加と需要があるのに介護職につかないのかの真実

高齢化と介護職の需要が進む一方で、介護職に従事する人材は不足し底辺というイメージが払拭できていな状況です。これは複数の要因が重なって生じていると考えられます。

介護職の待遇とイメージ

介護職は他の職種と比べて給与水準が低く、労働時間が長く体力的にも厳しい仕事であるにも関わらず、社会的に「底辺」と見られることもあります。さらに、業務内容が身体的負担を伴ううえ、夜勤や休日勤務が求められることも多く、精神的な負担も大きいため、他の職業に比べて不人気です。そのため、離職率が高く、人材不足が加速する一因となっています。

高齢者人口の増加によるサービス需要の拡大

高齢者人口が増加し、それに伴い介護サービスの需要も拡大しています。特に、後期高齢者(75歳以上)の人口が2076万人と増加しており、日常生活に介護を必要とする高齢者も増加しています。介護保険制度の利用者数が約3.5倍に増えているため、現場では人手が追いつかず、常に人材不足の状況が続いているのです。

人材確保への制度的支援の不足

介護職の人材確保についての国や自治体からの支援は、介護需要の増加に対して十分とは言えません。賃金補助や労働環境の改善支援はあるものの、他職種と比べてまだ改善の余地が多く、介護職員の待遇向上を望む声が高まっています。

社会的な価値と認識のギャップ

高齢者ケアは社会全体にとって不可欠なものですが、介護職自体に対する社会的な評価や認識が追い付いていないことも問題です。多くの人が介護を「誰にでもできる仕事」と捉えがちですが、実際には専門知識や技術、体力や忍耐力が必要であり、軽視されるべき職種ではありません。

社会が抱える介護職の現実

介護職は社会的には欠かせない職種ですが、働く環境や待遇が不十分であることが現実です。介護業界では、長時間労働やシフト勤務が当たり前となり、限られた人手での対応が求められています。特に夜勤が多い職場では、休みの少なさや身体的な疲労が蓄積しやすく、健康を害する介護士も少なくありません。

この過酷な労働環境は、人手不足が原因の一つとされています。高齢化が進み、介護が必要な人が増加している一方で、若年層の介護職離れや高い離職率が続いているため、職員一人ひとりへの負担が大きくなっています。また、現場の介護士は、常に「感謝されたい」「役に立ちたい」という思いで働いているものの、周囲からは必ずしも高く評価されていないのが現状です。

社会的な評価の低さに加え、給与も他の職業と比べて低いため、将来の生活設計が難しいと感じる人も多く、これがさらに介護職からの離職を促進しています。このような状況は、介護業界全体の労働環境改善を難しくしており、介護職の魅力が正当に評価されにくい要因となっています。

介護職に対する世間の偏見

介護職に対しては、「誰でもできる仕事」や「自己犠牲が必要」という偏見が根付いており、職業のイメージが低下しているのが現状です。世間では介護のスキルや知識を軽視する風潮があり、「介護は技術や学歴がいらない簡単な仕事」と見られることもあります。しかし実際には、介護職は専門的な知識や技術を要する職業であり、介護福祉士などの資格取得が推奨されるほか、利用者の個々の健康状態や心理状態に合わせた対応が必要とされるなど、高度な判断力やスキルが求められます。

また、「自己犠牲が必要」という偏見も根強く、介護職員が利用者に尽くすことを当然とする考え方が広まっています。これにより、介護職員が仕事に対して誇りを持ちにくくなり、さらに職業イメージが低下してしまう傾向にあります。このような偏見を払拭し、介護職が社会にとって重要であることを再評価することが、介護業界にとっても、介護職員にとっても必要不可欠です。

介護職を選ぶ人々の背景

介護職に就く人々の背景はさまざまであり、経済的な事情や家族の介護経験、自分の人生観などが関係している場合が多いです。多くの介護士は、「人の役に立ちたい」「家族に尽くす仕事にやりがいを感じる」という強い思いを持っています。また、家庭の事情から短期で就職先を見つける必要があったり、過去に自分や家族が介護を受けた経験から、そのありがたさを知り、介護職を志すケースも見られます。

特に高齢の親族を抱える家庭では、「いつか自分も親の介護をすることになるかもしれない」という予想のもとで介護職を選ぶ人もいます。さらに、他業種からの転職組も少なくありません。転職者の中には、「今までの仕事にやりがいを感じられなかった」「人と深く関わる仕事をしたい」という理由で介護職に進む人もいます。

介護職を選ぶ背景は一人ひとり異なるものの、共通して見られるのは、他者への貢献や支えたいという思いです。しかし、社会の評価や待遇が伴わない現実が、そのやりがいを薄れさせる原因ともなりかねません。

底辺という言葉の真意

「底辺」という言葉は、介護職の実情を知らない人たちによって偏見から使われることが多く、実際の業務内容や役割の重要性が軽視されがちな一面があります。しかし、介護職が低く見られる背景には、社会的な評価の低さや収入面での格差が関連しているのも事実です。

本来は「底辺」として軽んじられるべき職業ではなく、むしろ介護職員が社会を支える不可欠な存在としての役割を担っていることが理解される必要があります。

介護業界における職業ランキング

年収や社会的な評価を基に職業をランク付けした際、介護職は他業種に比べて低く見積もられることが多いです。平均年収が比較的低く、昇給の機会も限られていることから、介護職が低ランクに位置づけられやすいという傾向が見られます。

また、介護福祉士やケアマネージャーといった資格を取得しても、大幅な昇給には繋がりにくいのが現実です。このような職業ランキングの低さが、介護職へのマイナスイメージに結びついてしまい、「底辺」という言葉が用いられる原因の一つになっています。

まとめ:底辺といわれる介護職と高齢者人口と介護需要について

高齢化が進む一方で、介護職の需要が増えているが、従事する人材は不足している現状が見られるのは、社会での収入格差が挙げられます。介護職に従事する人々の多くは正社員であっても他業種に比べて賃金が低い傾向にあります。また、昇給や昇進のチャンスも限られているため、職員が将来的なキャリアや収入の向上を望みにくい状況が続いています。

さらに、介護の現場では日々の業務が身体的・精神的に負担の大きいものばかりであるにもかかわらず、その負担に見合った待遇改善が進まないという問題もあります。介護職員は高齢者の身体介助や入浴、排泄支援といった重労働に加え、利用者やその家族とのコミュニケーションにも気を使い、精神的にも疲労が溜まりやすい状況です。しかし、その割に給与が低く、職業としての魅力が十分に評価されていないため、介護職は「底辺」とされてしまう要因となっています。そいった状況で就職や転職をするが理由があり退職して介護職は二度とやりたいくないという人が増えているのです。国にも介護職不足になるのは目に見えているおり、政策を考え処遇改善を行っているが不十分であり大きな改善につながっていないのが現状です。まじめに介護職を行っている職員に対しての処遇改善を国・地域・事業所・職員が考え行動にうつしていかないと改善は難しい状況です。

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