訪問介護ヘルパーとして働く際には、利用者との信頼関係を築くことが非常に重要です。しかし、知らず知らずのうちに行ってしまうNG行動が、その信頼を損ねる原因となることがあります。ここでは、訪問介護ヘルパーが絶対に避けるべき行動とその理由、そして実際の現場でのやり取りの具体例を紹介します。
利用者のプライバシーを侵害する行為
例:個人情報の無断取り扱いとその影響
現場のやり取り例:
利用者の家を訪問中、ヘルパーAが同僚に利用者Bの健康状態についてSNSでメッセージを送る場面があった。しかし、これは重大なプライバシー侵害であり、万が一利用者がそれを知った場合、信頼関係が崩れる可能性が高い。
なぜNGか:
利用者の個人情報は極めてセンシティブであり、法的に個人情報は保護されています。無断で情報を共有することはプライバシーの侵害であり、個人情報保護法に違反する可能性があります。これにより、ヘルパーや事業所が訴訟に巻き込まれるリスクが高まるため、厳守が求められます。
無断で介護計画を変更すること
例:計画変更の適切な手続きとリスク
現場のやり取り例:
ヘルパーBは、利用者Cが「今日からお風呂をお願いしたい」と言った際に、計画に基づかずに同意してしまった。後でサービス提供責任者がその変更を知らされず、ケアマネジャーからケアプランにも記載ないのに勝手に支援するのは筋が違うと苦情が入った。
なぜNGか:
訪問介護計画は、利用者のニーズや安全を考慮してケアマネジャーが策定したケアプランに基づいたものです。無断で変更すると、介護保険での請求不可や計画通りのケアが提供されず、利用者の健康や安全が損なわれる可能性があります。また、計画通りのサービスが提供されないことで、家族や利用者からの信頼を失い、事業所の評価も下がるリスクがあります。
感情的な対応や言葉遣いの不適切さ
例:職業的対応と適切なコミュニケーション
現場のやり取り例:
利用者DがヘルパーCに「今日の夕食はまずかった」と言った際、ヘルパーCが「こんなに忙しいのに文句ばかり言わないでください!」と感情的に反応してしまった。これにより、利用者は不快感を抱き、次回の訪問を拒否することになった。
なぜNGか:
利用者はヘルパーに対して安心感を求めています。感情的な対応や不適切な言葉遣いは、利用者に不安や不信感を与え、関係性を悪化させます。また、利用者がケアを拒否することで、サービスの継続が困難になる場合もあり、事業所の評判に悪影響を及ぼす可能性があります。利用者の方が一方的な場合もあります。そういう場合はカスタマーハラスメントに該当する利用者になるかもしれません。感情的にならずサービス責任者と支援内容やその時の言動を検討してみましょう。
専門的な知識やスキルを欠いたケアの実施
例:適切なトレーニングと技術の重要性
現場のやり取り例:
ヘルパーDは、移乗の際に適切な方法を理解しておらず、利用者Eを誤って転倒させてしまった。この事故は、ヘルパーDがEさんに対して十分な理解や介護技術を身に着けていないことで事故が発生しました。
なぜNGか:
不適切なケアは利用者の安全を直接脅かすリスクがあり、重大な事故や健康被害を引き起こす可能性があります。人によっては膝関節が動かないなど人により状態が違うのが当たり前の現場となっております。専門的な知識とスキルを持たないままケアを行うことは、ヘルパー自身にも法的責任が問われることがあり、利用者やその家族との信頼関係にも悪影響を及ぼします。しっかりとした専門職としてのアセスメントを実施し利用者にあった介護を行っていく必要性があります。
時間管理の不備とその影響
例:訪問スケジュールの遵守と効率的なケア
現場のやり取り例:
ヘルパーEが利用者Fの家に予定より30分遅れて到着したため、Fさんは混乱し、ヘルパーの訪問をキャンセルした。その後、Fさんが脱水症状で体調を崩し、ケアの中断が原因で症状が悪化したと指摘された。
なぜNGか:
訪問介護サービスの中では認知症の方などで十分な水分補給や食事などを行え場合などもあります。それぞれのサービス提供は利用者の日常生活を支えるものであり、時間厳守が重要です。遅延は利用者の生活リズムを崩し、健康や安全に悪影響を与える可能性があります。加えて、サービスの信頼性が疑問視され、利用者やその家族からのクレームや契約解除につながるリスクがあります。時間などで遅れる場合はゆとりやあらかじめ調整の連絡などを入れ利用者や周りの家族が混乱しないような根回しも必要です
利用者の指示や意向を無視すること
例:利用者の自主性を尊重する理由
現場のやり取り例:
ヘルパーFが、利用者Gに「今日はデイに行きたくない」と言われたにもかかわらず、「デイサービスだから行きましょう」と強引に外出を促した結果、Gさんは不満を抱き、次回のサービスを拒否するようになった。
なぜNGか:
利用者の意思や自主性を尊重しない対応は、利用者の心理的な負担を増加させ、サービスに対する不信感を引き起こします。利用者が自分の生活に対するコントロール感を失うと、精神的な健康にも悪影響を与え、最終的にはサービスの継続が困難になる可能性があります。困難な場合はどうすかはケアマネジャーや家族と相談を行い無理強いしない支援を行っていくことが重要です。
不適切な衛生管理
例:衛生管理の基準とその重要性
現場のやり取り例:
ヘルパーGが手洗いを怠った状態で食事の準備を行ったため、利用者Hが軽度の食中毒症状を訴えた。Hさんの家族が調査を求めた結果、衛生管理の不備が明らかになり、ヘルパーGは改善を指導された。
なぜNGか:
衛生管理が徹底されていないと、食中毒や感染症のリスクが高まります。特に高齢者や免疫力が低下している利用者にとって、衛生管理の不備は命に関わる問題となります。適切な衛生管理を行わないことは、利用者の健康を守る責任を果たしていないと見なされ、法的な責任が問われる場合もあります。
安全対策の不徹底
例:リスクを避けるための安全対策
現場のやり取り例:
ヘルパーHが利用者Iの家で使用する歩行器の点検を怠ったため、歩行器が突然壊れ、Iさんが転倒して骨折してしまった。この事故により、ヘルパーHは厳重な注意を受け、施設全体で安全対策の見直しが行われた。
なぜNGか:
安全対策が不十分だと、利用者が事故に遭うリスクが高まります。特に高齢者は転倒や事故による怪我が命に直結する可能性が高いため、安全対策の徹底は必須です。不適切な安全対策は、ヘルパー自身や事業所に対する訴訟リスクを高め、業務の信頼性を損なう結果となります。
仕事外の個人的な関与
例:職場の境界線を守る理由
現場のやり取り例:
ヘルパーIが利用者Jの家族と個人的に連絡を取り合い、仕事外でのサポートを行った結果、他の家族から不平等な対応だと不満が出てしまった。これにより、Jさんの家族との信頼関係に亀裂が入った。
なぜNGか:
仕事とプライベートの境界線を曖昧にすることは、プロフェッショナルな関係を崩壊させるリスクがあります。利用者やその家族との個人的な関与は、他の利用者との間で不平等感を生む原因にもなり、トラブルの元となります。また、ヘルパーが感情的な負担を抱えることにもつながりかねません。
報告義務の怠慢
例:問題発生時の適切な報告と対処方法
現場のやり取り例:
ヘルパーJが利用者Kの自宅で転倒したが、本人は大丈夫だといって事故を報告しなかったため、その後、転倒したことで仙骨が骨折していたという大きな問題に発展し、事後報告となったことで信頼が損なわれた。このケースは、報告義務の重要性を再認識させる出来事となった。
なぜNGか:
事故や問題が発生した際に報告を怠ると、その問題が後で大きなトラブルに発展する可能性があります。適切な報告がなされないと、事業所全体での問題解決が遅れ、利用者の安全が脅かされることになります。また、問題が隠蔽されたと見なされると、事業所の信用が大きく損なわれるリスクがあります。
訪問介護ヘルパーが行えない業務表(NGな業務)
身体介護でできない事
<排泄介助> | ・摘便、浣腸・膀胱洗浄 |
・人工肛門等の交換 | |
・排尿カテーテルの洗浄、消毒 |
<外出介助> | ・院内介助 |
・ヘルパーが運転する車を使った外出 |
<食事介助> | ・チューブ、カテーテルの挿入 |
・経管栄養注入 |
<その他> | ・散髪・爪切り・床ずれ処置 |
・医療行為に類似するサービス | |
・入院中、入退院時の付き添い | |
・リハビリ、マッサージ |
生活介護でできない事
<調理> | ・ご利用者様本人以外の分の調理 |
・手の込んだ調理 | |
・治療食等の調理・特殊な料理など |
<掃除> | ・ご利用者様本人以外が使用する場所の掃除 |
・普段使わない場所の掃除 | |
・大掃除、大きな家具等の移動、庭の手入れ | |
・自家用車の洗車、清掃 |
<洗濯> | ・ご利用者様本人以外の方の洗濯 |
・家庭用洗濯機で洗えない物(ドライ品等) |
<寝具の整頓> | ・ご利用者様本人以外の方の寝具に関わる事 |
<買い物> | ・ご利用者様本人以外の方が使用する物 |
・お歳暮等の贈答品・嗜好品の購入 |
<その他> | ・屋内外の大工仕事 |
・ペットの世話 | |
・金銭及び財産管理 | |
・来客の応対・公共機関や公文書等への代理人行為・年賀状等の季節状や案内状書き |
結論
訪問介護ヘルパーとしての業務は、利用者との信頼関係を築くために、細心の注意を払って行う必要があります。上記のNG行動を避け、適切な対応を心がけることで、質の高いケアを提供し、利用者の満足度を高めることができます。