現役ケアマネジャーの役割と業務内容
ケアマネとは?介護支援専門員の重要性
ケアマネジャー(介護支援専門員)は、要介護者やその家族が安心して生活を送るためのケアプランを作成・管理し、介護サービスの調整を行う役割を持ちます。要介護者の身体状況や生活環境、希望を考慮しながら、利用者にとって最適な支援を提供することが求められます。ケアマネジャーは利用者とサービス提供者との橋渡し役であり、介護業界全体をスムーズに機能させるための重要な存在です。
ケアマネ業務の基本と必要な知識
ケアマネジャーの主な業務は、介護保険の申請手続き、アセスメント(利用者の心身状態やニーズの評価)、ケアプランの作成、訪問によるモニタリング(定期的な見直し)です。これらを円滑に進めるためには、介護保険制度や高齢者の健康管理、社会資源に関する知識が必要です。利用者やその家族の信頼を得るためには、コミュニケーションスキルも非常に重要で、適切な情報収集と分かりやすい説明ができることが求められます。
ケアプラン作成の流れとポイント
ケアプラン作成は、利用者の個別ニーズを反映した支援内容を計画する重要なプロセスです。その流れは以下のようになります
- アセスメント – 初回面談や定期的なモニタリングで、利用者の生活状況や心身の状態、家族のサポート体制を確認します。ここで収集した情報がケアプランの基盤となります。
- 目標設定 – 利用者の生活の質を向上させるための目標を具体的に設定します。目標には「歩行の安全性向上」や「食事時の自立支援」などがあります。
- サービスの選定と配置 – 設定した目標を達成するために必要なサービスを選び、利用者が無理なく活用できるよう調整します。たとえば、訪問介護やデイサービス、リハビリテーションなど、利用者の状態に合わせて最適な支援を組み合わせます。
- ケアプランの評価と見直し – ケアプランが利用者の状態やニーズに合致しているかを、定期的にモニタリングし、必要に応じてプランを見直します。
ケアマネ一人の担当数の平均
ケアマネジャー一人が担当する要介護者の数は、介護保険制度によって標準的な目安が定められています。居宅介護支援事業所で働くケアマネジャーの場合、一人あたり35名程度の利用者を担当するのが平均的な基準とされていますが、地域や事業所によって異なる場合があります。介護度が高い利用者が多いときや、利用者のサービス内容が複雑な場合には、担当数を減らすこともあります。
実際の担当者数は全国平均で約30~40名に収まっていることが多く、これは各地域の利用者のニーズに合わせて担当数を調整している事業所が多い様子です。地域によってはケアマネ不足でケアマネ難民といわれてることもあるようです。
逓減制適用時のケアマネ担当件数
逓減制とは特別の物事との対応においてある比率で減少することをいいます。居宅介護事業所の登録している体制によって違いますが、仮に利用者が44人を超えた場合には、「利用者数が44人またはその端数を増すごとにさらに1名の配置」が必要です。 なお、1人の介護支援専門員の担当件数が44件以上になると、減算の対象になります。 この仕組みを「逓減制(ていげんせい)」と呼びます。
逓減制緩和措置により担当件数の上限が変わります。
「逓減性」を意識して担当数を適切に調整し、ケアの質を確保することは、利用者とケアマネジャー双方にとって重要な課題です。
逓減制の緩和措置の要件としては、ケアプランデータ連携システムの活用及び事務職員の配置が必要です。
居宅介護支援費(Ⅰ) 緩和措置 | 居宅介護支援費(Ⅱ) 緩和措置 |
45件から逓減制適用 | 50件から逓減制適用 |
※要件:ケアプランデータ連携システムの活用及び事務職員の配置
逓減制を活用すれば売上は伸びるが、業務負担は増えます。どちらがいいのかは事業所とケアマネとが要検討していく必要性があります。
ケアマネの1日の訪問件数について
ケアマネジャーの一日の訪問件数は、担当する利用者数や業務の内容、地域の特性などによって異なりますが、一般的には1日あたり3~5件程度が目安とされています。この訪問数を超えると、移動や記録作成にかかる時間が増えるため、効率的な業務管理が必要になります。
1日の訪問スケジュール例
1. 訪問計画の立案
- ケアマネジャーは訪問前に、各利用者の状況や優先度に応じて計画を立てます。訪問スケジュールを週ごとに組み、移動時間を考慮しながら効率的に回れるルートを設計します。
2. 午前中:3件の訪問
- 1件目 (9:00-10:00):午前の最初の訪問は、認知症のある利用者Aさん。最近の状態や薬の確認、介護サービスの利用状況を確認します。
- 2件目 (10:30-11:30):次に身体介護が多い利用者Bさんを訪問。家族からの相談にも応じながら、福祉用具の使用状況をチェックします。
- 3件目 (12:00-12:30):午前最後の訪問は比較的自立している利用者Cさん。必要なサービスが適切に提供されているかの確認を行います。
3. 午後:2件の訪問
- 4件目 (14:00-15:00):午後の初めには、要介護度の高い利用者Dさんの自宅へ。サービス提供の追加が必要かどうかアセスメントを行い、リハビリの進捗状況を確認します。
- 5件目 (15:30-16:30):訪問最後の利用者Eさん。訪問介護サービスの調整や、生活環境の確認も含めたモニタリングを実施。
4. 訪問後の記録作成
- 1日の訪問後、16:30から17:30にかけて、各利用者の訪問内容を記録し、気づきや改善が必要な点を報告書としてまとめます。記録は今後のケアプランにも影響するため、迅速かつ正確に行います。
訪問件数と質のバランス
1日に5件以上の訪問をこなすと、1人あたりの訪問にかけられる時間が減少し、ケアの質が低下するリスクがあります。そのため、ケアマネジャーは訪問件数を調整しながら、一人ひとりの利用者に丁寧に対応することが大切です。
ケアマネの業務は突発的に利用者さんが体調不良を起こすことやキーパーソンの家族が介護できなくなるなどが起こります。できるだけゆとりをもって月1の訪問を行っていく必要性があります。
ケアマネジャーの1ヶ月のスケジュールとポイント
ケアマネジャーの1ヶ月は、ケアプランの見直しや月の1回の自宅訪問、モニタリング、事務処理など、さまざまな業務が計画的に進行していきます。特に月初には、実績確認や国保連への請求業務があり、請求データの確認や記入ミスのチェックなど正確性が求められる作業が重要です。以下に1ヶ月のスケジュールの流れと、各段階でのポイントを詳しく解説します。
訪問は月初から始めていく方が無理のない予定で調整していくことが出来ます。
月初:実績確認・請求業務とケアプラン見直し・訪問
- 主な業務: 月初は実績確認と、国民健康保険団体連合会(国保連)への請求業務が優先事項です。また、ケアプランの見直しや更新も行い、サービス提供事業者と連携をとります。
- ポイント:
- 実績確認と請求業務: 先月の訪問やサービス提供の実績を確認し、国保連への請求業務を行います。請求データの不備がないかを細かくチェックし、万が一のミスを防ぎます。
- ケアプランの見直し・更新: 利用者の健康状態や生活環境に変化があればケアプランの更新を行い、次月に向けて必要な調整を行います。
- サービス事業者との情報共有: サービス内容の変更や、新たなニーズが発生している場合には、サービス事業者と早急に連携して対応します。
月中:訪問・モニタリング
- 主な業務: 定期的な訪問を行い、利用者や家族と面談してサービス状況のモニタリングを行います。利用者との対話を通じ、生活面や健康面の変化をいち早く察知します。
- 訪問スケジュールの調整: 効率的にスケジュールを組み、担当者全員を定期的に訪問できるようにします。特に介護度の高い利用者には、細かい確認が必要です。
- モニタリングの実施: ケアの効果や利用者の健康状態を観察し、家族からのフィードバックも受けながら適切なサポートを提供します。
- 問題点の把握: サービス実施において問題がないか、利用者が安心して生活できているかを確認します。必要に応じて改善策を検討します。
月末:支援経過作成と次月の準備・訪問
- 主な業務: 月末には訪問やケア内容の記録をまとめ、支援経過を作成します。ケアプランの進捗状況や改善が必要な点をまとめ、次月に向けての準備を行います。
- 記録の整理: 訪問内容や利用者の変化を正確に記録し、関係者間で情報が共有できるようにします。
- サービス提供票の確認: 提供されたサービス内容に誤りがないか、利用者の負担額が正確かを確認し、ミスなく次月に移行できるよう調整します。
- 次月の訪問スケジュール作成: 次月の訪問予定を立て、業務がスムーズに進むように準備します。
効率的に業務を進めるためのポイント
計画的なスケジュール管理
月初、月中、月末の業務をあらかじめ計画し、業務が集中することのないようにします。特に月初は請求業務が中心のため、ミスがないように念入りに確認することが求められます。
利用者ごとのニーズに応じた柔軟な対応
利用者の状態は常に変わるため、状況に応じた柔軟な対応が重要です。定期訪問での観察をもとに、利用者の安心と満足度を高める支援を心がけます。
情報の共有とコミュニケーション
サービス事業者や家族とのコミュニケーションを積極的に行い、信頼関係を築くことが円滑な業務の進行につながります。
ケアマネジャーは1ヶ月の計画をしっかりと管理し、利用者とその家族の満足度を高めながら業務を進めることが大切です。
ケアマネジャーの残業時間は、担当する利用者数、事業所の方針、ケアマネジャー個々のスケジュール管理スキルなどによって異なりますが、一般的な傾向として以下のような残業時間が見られます。
ケアマネジャーの月ごとの平均残業時間
詳しいデータはありまありませんがふくまるが体感しているケアマネージャー業務や周りの事業所の様子を見るとケアマネジャーの月の10〜13時間前後残業 だと推測しております。月初には前月の請求業務、月末には次月の準備に加えて、利用者へのサービスの対応も行うため、月初と月末に残業が増える傾向があります。また、シャワーワークなども含まれます。
一日あたりの残業時間
一日あたりの残業時間は 1〜2時間程度 で、繁忙期や突発的な業務が発生した場合にはさらに増加する可能性があります。特に下記のような業務が残業につながりやすいとされています:
- ケアプランの更新や見直し:利用者の状態が変わった場合の急なケアプラン調整が発生することがあります。
- 突発的な対応:緊急の訪問や、利用者・家族からの急な相談への対応が必要な場合です。
- 書類業務:月初の実績確認や国保連への請求書類の作成時期は、業務が集中して残業につながりやすいです。
残業が少ないケースと多いケースの違い
ケアマネの残業時間は事業所の体制や、ケアマネ自身の業務スケジュール管理により変動します。効率的なスケジュール管理が行われているケースや安定しいる利用者のケースを受け持つと残業が少なく、困難事例や緊急対応や書類業務の負担が大きいケースや担当件数が多い場合は残業が多くなる傾向があります。
ケアマネージャーのシャドーワークについて
ケアマネジャーの「シャドーワーク」とは、公式にカウントされない業務や、目に見えない裏方の作業のことを指します。このシャドーワークは、利用者やその家族が気づきにくい部分であるものの、ケアマネジャーの重要な役割に直結しており、利用者の満足度やサービスの質を支えるためには欠かせません。しかし、山ほどあるシャドーワークの記録や業務調整したとしてもそれが介護支援の加算や評価また会社からの処遇改善にはつながっていないのです。むしろ責任の所在がケアマネに向けられることまであるのです
ケアマネジャーのシャドーワークの例
情報収集と整理
利用者の健康状態や生活環境に変化がないか、他の医療・福祉サービス事業者から最新情報を収集し、常にアップデートしておく必要があります。この作業は、訪問や公式の面談以外に行われることが多く、記録に残らないことがほとんどです。
家族や関係者へのフォローアップ
利用者の家族からの相談や、不安解消のためのフォローアップも重要です。特に在宅介護を行う家族にとってケアマネジャーは頼りになる存在であり、相談を受けることで家族の負担を軽減することに繋がりますが、これは労働時間に含まれないことが多いです。要は月1回の訪問ですまず何度も訪問することや電話対応を行う必要があります。
緊急対応への備え
利用者の健康状態が急変した場合や予期せぬトラブルが発生した際に、すぐに対応できるような準備や心構えが必要です。緊急時の対応フローを再確認したり、関係先と連絡体制を確認しておくなどの準備は、勤務時間外に行われることもあります。家族が対応できない状況などがあるとケアマネージャーが対応しざるおえないことが多々あります。
文書作成やデータ整理
ケアプランや訪問記録などの公式文書以外にも、インフォーマルサービスの調整や今後の課題整理などもシャドーワークとして行われます。こうした準備作業が次回の訪問やモニタリングに役立つため、ケアの質を高める重要な役割を担っています。ケアプランにはインフォーマルサービスを入れることが重要です。しかしインフォーマルサービス調整などはケアマネが行うことが多々ありこれらが加算や処遇などで評価されることはないのです。
ケアマネジャーにとってのシャドーワークの意義
シャドーワークは直接の報酬や評価にはつながりにくい一方、利用者の生活の質や家族の満足度に大きく貢献しています。また、ケアマネ自身が効率よく業務を進めるために事前準備が必要不可欠であり、利用者との信頼関係構築が可能になります。ケアマネに業務の中で現在シャドーワークが問題視されているのが現状です。今後は何らかの形で評価する体制をとらないとケアマネージャーは減少していく一方です。
まとめ:ケアマネジャーの日々の仕事内容
ケアマネジャーの業務は、日々の利用者対応から月単位での計画的な業務まで、幅広く求められる責任を担っています。1日の流れとしては、まず朝にメールや電話で関係者からの連絡や当日の訪問スケジュールの確認を行い、準備を整えます。午前中は利用者宅や施設を訪問し、健康状態や生活状況をモニタリングしたり、家族からの相談に応じるなどのサポートを行います。午後も訪問や関係機関との打ち合わせ、記録作業に時間を割き、各利用者のケアプランの確認と調整を行います。夕方にはその日の報告書や翌日の準備を済ませ、次の業務へと備えます。
月間の業務としては、まず月初に前月分の実績を国保連へ提出するための書類作成や確認作業を行います。訪問スケジュールも月初に立て、効率よくモニタリングが行えるよう計画します。中旬には定期訪問を実施し、利用者の生活状況や身体状況を把握するほか、必要に応じて家族との面談やフォローも行います。また、ケアプランの見直しや必要な書類の作成も行い、サービスが適切に提供されるよう調整します。月末には、次月に向けたケアプランの再検討や修正を行い、上司や関係者への報告、実績の整理も完了させます。
このように、ケアマネジャーの1日および1ヶ月の業務は利用者のニーズに応えながらも効率を考えたスケジュール管理が求められており、緻密な計画と柔軟な対応力が不可欠です。