介護ブログ|専門職のプライドと利用者の自己決定 ― 折り合いをつける知恵

専門職のプライドと利用者の自己決定

介護の現場では、専門職としての判断と利用者の自己決定がしばしばぶつかります。
「安全のためにこうすべき」と専門職は考える。しかし、利用者は「自分の好きにしたい」と言う。この板挟みの状況は、ケアマネをはじめ多くの支援者にとって避けられないテーマです。
プライドと自己決定の衝突
たとえば、転倒リスクが高い高齢者に「ベッドで休むより椅子に座ってテレビを見たい」と言われたとします。専門職の視点からは「椅子は危険だから避けるべき」と判断するかもしれません。しかし、利用者からすれば「残りの人生、好きに過ごしたい」という思いがあります。
ここで専門職が「安全のため」と強引にベッドを勧めれば、利用者の自己決定を奪うことになります。逆に利用者の希望だけを優先すれば、転倒事故のリスクは増す。どちらも極端に振れれば、支援としてのバランスを欠いてしまいます。
プライドが邪魔をするとき
専門職としてのプライドは大切です。専門知識と経験をもとにリスクを見抜き、最善策を考えることは職責そのものです。
しかし、そのプライドが強すぎると「私が正しい」という姿勢になり、利用者の声を聞く耳を失ってしまいます。
特にケアマネは、看護師やリハ職、ヘルパーなど多職種との調整役を担います。そこで「自分のプランが正しい」と固執してしまえば、結局は支援体制全体がぎくしゃくしてしまう。プライドは必要ですが、使い方を誤ると支援を阻害する原因になりかねません。
折り合いをつける知恵
では、どうやって専門職のプライドと利用者の自己決定を両立させるのか。ポイントは「リスクと選択肢を見える化すること」です。
たとえば「椅子に座ることは転倒リスクが高いが、座面の低い椅子ならリスクを軽減できる」「杖や手すりを併用すれば、本人の希望を尊重しながら安全を確保できる」といった具合に、折衷案を提示します。
大事なのは「どちらか一方」ではなく、「どうすれば両立できるか」を探ること。その過程にこそ、ケアマネの調整力と知恵が求められます。
自己決定の“裏側”も確認する
もう一つ忘れてはならないのは、「自己決定=本人の本心」とは限らないことです。
実際には「家族に迷惑をかけたくないから」「周囲に遠慮しているから」といった理由で、本人が本音を隠していることもあります。
そのため、自己決定を尊重するにしても、その背景を丁寧に掘り下げることが必要です。形式的に「本人が言ったから」で済ませてしまえば、逆に本人を追い詰める結果にもなりかねません。
プライドを柔らかく使う
専門職のプライドを手放す必要はありません。むしろプライドは、利用者を守るための武器になります。
ただし、その武器を振りかざすのではなく、柔らかく使うこと。
「私の経験から見て危険です」と断言するのではなく、「こういうリスクがありますが、どうしますか」と問いかける。言葉を変えるだけで、利用者の自己決定を尊重しながら、専門職としての知見を伝えることができます。
まとめ ― 共に納得できる支援へ
介護支援において、専門職のプライドと利用者の自己決定は対立するものではなく、調整すべき両輪です。
プライドを盾にして押し付けるのでもなく、自己決定を免罪符にして放任するのでもなく、双方が納得できる落としどころを探す。そこに必要なのは、知識以上に柔らかい知恵と対話力です。
ケアマネの役割は、利用者の人生を“管理”することではなく、専門職の視点を持ちながら、その人の選んだ道を歩みやすく整えること。
プライドと自己決定の間で揺れる葛藤こそ、私たちが本当に専門職である証なのかもしれません。

























