ケアマネージャーが抱えるさまざまな悩みや退職理由について掘り下げ、する記事にとなっております。ケアマネージャーは現在、職員不足になっており、退職される方の理由や現状を理解していくことで離職予防の手掛かりとなります。
ケアマネを辞める理由
ケアマネージャー(ケアマネ)の仕事は、高齢者やその家族の生活を支える非常に重要な役割を担っていますが、その分、多大な精神的・身体的負担がかかる職業でもあります。以下では、ケアマネが退職を決断する主な理由や、その影響について詳しく解説します。
ケアマネとして心が折れる瞬間とは
ケアマネが仕事をしていく中で、心が折れるような場面は少なくありません。特に以下のような場面が精神的な負担として挙げられます。
利用者家族と本人の意見の対立
高齢者のケア方針に関して利用者家族と意見が合わない場合、時には緊張が高まり、ケアマネが板挟みになることがあります。このような場面では、利用者・家族からの批判や意見の衝突が続くと、ケアマネの精神的負担が大きくなります。
過剰な業務量と対応のプレッシャー
ケアマネは多くの利用者を担当し、ケアプランの作成や施設との連携など複数の業務を抱えています。利用者からの急な依頼や緊急対応などが重なり、休む暇もないほどの忙しさに追われると、業務の重さに耐えきれなくなることもあります。
感謝されないことへの虚しさ
ケアマネは利用者やその家族のために尽力しますが、その労力が認められず、感謝の言葉をもらえないことも少なくありません。努力が報われないと感じる場面が続くと、やりがいや使命感を見失ってしまうこともあります。
これらの経験が積み重なると、心の負担が限界に達し、最終的に退職を決断する原因となるケースが多いです。
ケアマネ=なんでも屋として扱われる
多岐にわたる役割が精神的・肉体的な負担に
ケアマネは、単に利用者のケアを計画するだけではなく、相談相手や調整役、時には生活面でのサポート役にもなります。利用者や家族からの要望はケアに限らず、生活のあらゆる場面に及ぶこともあります。そのため、ケアマネは本来の業務以上に多くの対応をすることになり、役割が増えすぎることで気持ちや体力などが消耗してしまいます。
業務の境界が曖昧になりやすい
介護の現場では、「ケアマネなら何でも知っているだろう」「何とかしてくれるだろう」と期待されることが多くあります。この期待が、業務範囲を超えた依頼や相談に繋がることがあります。ケアマネは、利用者や家族に応えたいという思いが強い反面、対応しきれない依頼や要望に悩むことが多くなり、自己負担を感じやすくなります。
本来の業務が進まないジレンマ
多忙なケアマネにとって、本来のケアプラン作成や事務処理の業務に加えて「なんでも屋」としての役割が増えると、時間的な余裕が失われがちです。訪問や電話対応、家族との調整やトラブル対応に追われると、ケアマネとしての本来の業務が後回しになってしまい、業務全体が回らなくなることもあります。このジレンマが、精神的な疲れを増幅させます。
職場のサポート不足
多様な業務をこなす中で、職場からのサポートやチームの協力が十分でないと感じるケアマネも少なくありません。人員不足や業務の過多が続く中でサポート体制が整わないと、ケアマネが負担を抱え込み、心身ともに疲れが蓄積されやすくなります。サポートがないまま、全てを自分で解決しなければならない状況が続くと、「なんでも屋」的な役割に限界を感じやすくなるでしょう。
ケアマネの役割への理解とサポート体制
ケアマネが「なんでも屋」としての役割に疲れてしまう背景には、業務の境界が曖昧になりがちなこと、過度な期待、限られた時間での対応、感謝されにくさ、職場のサポート不足といった要因が重なっています。このため、ケアマネには、業務の範囲や優先順位を明確にし、必要に応じてサポートを求められる環境が重要です。また、ケアマネの役割を職場全体で共有し、理解してもらうことも、彼らが長く働き続けられるための一助となるでしょう。
担当する困難事例に疲弊する
ケアマネージャーが扱う「困難事例」は、特に精神的・感情的に負担が大きく、燃え尽きや離職の一因となることが多いです。困難事例とは、通常のケアや支援では対応が難しいケースを指し、ケアマネに高い専門性と柔軟な対応力を求めるものです。
困難事例だといっても単価は一緒です。ケアマネにとっての評価はゼロに等しく、普通の利用者よりも問題があり、トラブル対応・事業所間の橋渡しや謝罪などに業務を追われ気持ちが摩耗していくことがあります。
家族との関係が複雑なケース
利用者本人はもちろん、家族との関係が複雑なケースは、ケアマネにとって大きな負担となります。たとえば、家族間で介護方針が合わない、利用者への支援を巡って対立があるなどの場合、ケアマネは双方の立場を理解し調整しなければなりません。また、家族が支援に協力的でない場合、ケアが思うように進まないため、困難が増すことがあります。
対処法:
・家族全員を含む面談を設け、双方の意見を調整する場を作る。
・心理的ケアや家族支援が可能なサービス(心理士、ソーシャルワーカーなど)を紹介する。
・必要に応じて福祉課や地域包括支援センターなどの専門機関と連携し、家族の負担を軽減する。
本人の拒否が強いケース
認知症や精神疾患がある利用者に多く見られるケースで、ケアや介護サービスそのものに強い拒否反応を示す方もいます。この場合、ケアマネが何度訪問しても応じてもらえなかったり、必要なサービスが提供できずに悪循環が続いたりすることがあります。さらに、家族がいる場合は、家族もまた対応に疲れていることが多いため、ケアマネ自身が孤立感を抱くことがあります。
対処法:
・まずは利用者の心理状態や拒否の原因を理解し、時間をかけて信頼関係を築くことを優先する。
・拒否が強い場合は、柔軟にケアの内容を調整し、少しずつ対応を進める。
・訪問リハビリや訪問看護など、他の専門職と連携して複数の視点からアプローチする。
各専門職の倫理観や評価は必要であるが、職種それぞれの価値を押し付けることで困難事例の方などは拒否をされることがあります。(ああした方がいいやこうした方がいいなど)サービス利用に繋がらなくても長い目でその方を理解し支援していく事が重要です。しかし、一言でいえば相当面倒くさい業務になります。実質ケアマネはサービスがつながらないことで事業所さんも売り上げにつながらないのでどうにかしてくれと訴えられます。利用者と事業所の板挟みに合いケアマネは心が摩耗されるのです。
慢性的な問題を抱えるケース
長期にわたり慢性的な問題を抱えているケースも、ケアマネには大きな負担となります。たとえば、経済的な困難や支援者が疎遠の場合や、何かあればケアマネが対応するが、決定はない為、話が進まず解決が難しい状況が続き、ケアマネの対応も長期にわたります。特に、利用者や家族が一時的な改善を期待している一方で、現実には問題解決に時間がかかるケースはストレスになりやすいです。
対処法:
・利用者と家族の希望を共有し、長期的な視点で問題解決に向けた支援を説明する。
・地域の福祉団体や生活支援団体、ボランティア団体などと連携し、生活面の負担を分散させる。
・小さな目標を立て、一つひとつ達成することで支援の進展を実感してもらう。
複数の医療・介護ニーズが重なっているケース
利用者が複数の疾患を抱えている場合、それぞれの疾患に応じた医療ケアが必要であり、複雑な調整が必要です。ケアマネは複数の医療機関や介護事業所、薬局などと連携する必要があり、調整が多岐にわたるため、スケジュール管理や情報の整理が難しくなります。特に、多職種との連携が不足すると、ケアがうまく機能しなくなるリスクがあります。
対処法:
・定期的なカンファレンスを開催し、多職種間の情報共有と連携を強化する。
・ケアマネ自身も多職種の知識を深め、各分野の専門職と効果的なコミュニケーションをとる。
・関係者間の役割分担を明確にし、過度な負担が一方に集中しないよう工夫する。
利用者の自立支援が難しいケース
ケアマネは、利用者ができる限り自立した生活を送れるように支援することが役割ですが、本人の状態や環境が自立を阻むことも多くあります。たとえば、病状が進行しやすい場合や、自立支援へのモチベーションが低い利用者の場合、ケアマネが期待する自立レベルと現実のギャップが大きくなり、進展が見られないことに挫折を感じやすいです。
対処法:
・利用者本人の目標や意欲を尊重し、小さな成功体験を積み重ねる支援を心がける。
・自立が難しい場合には、生活の質を向上させる別の目標を設定し、取り組みを見直す。
・医療機関やリハビリ機関と連携し、現状に即したケア方針を策定する。
困難事例へ心構え
ケアマネが直面する困難事例は、一つひとつが非常に手間と時間、精神的なエネルギーを要するものであり、孤立感や疲労感を招きやすいものです。困難事例への対応には、職場の上司や多職種との連携や支援機関の活用が重要であり、ケアマネが一人で全ての問題を抱え込まないことが鍵です。
ケアマネージャーとうつ病症状について
ケアマネの仕事は、精神的負担が大きいため、うつ病のリスクは存在します。うつ病の主症状や発生しやすい原因と、その予防策について解説します。
うつ病は、気分や思考、身体に影響を与える精神疾患で、意欲の低下や疲れやすさ、自己評価の低下など、さまざまな症状が現れます。原因は人によって異なりますが、心理的ストレスや過度な負担、過去のトラウマ、または遺伝的要因も影響すると考えられています。
うつ病の主な症状
- 持続的な気分の落ち込み:悲しみや空虚感を感じることが多くなります。
- 興味や喜びの喪失:普段は楽しいと感じることにも興味がわかなくなります。
- 疲労感やエネルギーの減少:日常的な活動が困難になるほど、疲れやすくなります。
- 食欲や体重の変化:急激な食欲の増加や減少、体重の増減が見られることがあります。
- 睡眠の問題:眠れない、途中で目が覚める、逆に寝すぎてしまうといった症状もよくあります。
- 自己評価の低下:自分を無価値だと感じる、あるいは自分を責めるような思考が増えます。
- 集中力や決断力の低下:考えがまとまらず、何事も決断が難しく感じることがあります。
うつ病の原因
- 心理的なストレス:職場や家庭でのストレスが持続することが、うつ病のきっかけとなることがあります。
- 生物学的な要因:脳内の神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリンなど)のバランスが崩れると、うつ病が引き起こされやすくなるとされています。
- 遺伝的要因:家族にうつ病の患者がいると、リスクが高まることがわかっています。
- 性格的な要因:真面目で責任感が強い人や、他人の期待に応えようとする人は、うつ病になりやすい傾向があります。
ケアマネ業務とうつ病予防
過労によるストレス
長時間の労働や、対応が複雑なケースが続くと、精神的・身体的に消耗しやすくなります。過労が原因でうつ症状を引き起こす前に、日々のスケジュールに余裕を持たせ、適度に休息をとることが予防に役立ちます。
相談先を確保する
精神的な負担を軽減するために、信頼できる相談相手を持つことが重要です。上司や同僚、場合によってはメンタルヘルスの専門家に相談することで、気持ちが軽くなることがあります。多忙な職場環境では相談する機会が少なくなりがちですが、あえて時間を設けることで、自身の精神面を整えやすくなります。
自己ケアを徹底する
リラクゼーションや趣味に時間を割くことで、仕事から一時的に距離を置き、心の健康を保つことが大切です。十分な睡眠、健康的な食事、適度な運動といった基本的なセルフケアが、精神面の安定に貢献します。
ケアマネが抱える精神的負担は大きいですが、適切な予防策やサポートを得ることで、うつ病リスクの低減が可能です。仕事を続けるためにも、早めに対策を講じ、必要であれば休養や職場変更も検討することが重要です。
ケアマネの給料について
ケアマネージャーの給与手取りと平均月収
厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果(p.119)」第83表 介護従事者等の平均給与額等(月給の者),職種別,勤務形態別(介護職員処遇改善支援補助金を取得している事業所)によると、常勤で働くケアマネジャーの平均給与額は36万1,770円です。 平均年収を算出すると、434万1,240円(平均月収×12ヶ月)となります。
年収430万円の手取り額は、所得税や住民税、社会保険料を差し引いた額となります。年齢や家族構成によって異なりますが、430万円の手取り額は約350万円前後と推定できます
出典:令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果 第83表介護従事者等の平均給与額等(月給の者),職種別,勤務形態別(介護職員処遇改善支援補助金を取得している事業所)(p.119)より
まとめ:なぜケアマネは辞めてよかったと言ったのかについて
ケアマネジャーが「辞めてよかった」と感じる理由は、仕事の過剰な負担や精神的なストレスから解放されたことが大きいです。ケアマネは多くの役割をこなし、利用者や家族との意見の対立や緊急対応、感謝されない虚しさなど、さまざまなプレッシャーを抱えています。また、「なんでも屋」として期待され、業務範囲が曖昧で過重労働に繋がるケースが多く、サポート不足や孤立感も感じやすい職場環境が負担となっていました。そのため、辞めたことでこれらの重圧から解放され、心理的な負担が軽減されて「辞めてよかった」と感じることが多いようです。
そして地域によっては、ケアマネ不足が発生していることもあります。ケアマネジャー不足への対策として、介護支援専門員の資格を持っていても、ケアマネとして働いてない「潜在ケアマネ」や「元ケアマネ」の活用を進める施策を厚生労働省のケアマネジメント検討会で話し合われているそうです。しかし、現在の状況でケアマネたちは辞めてよかったと思う方たちがもどってくるメリットが現在のケアマネ業界ないのかもしれません。