ケアマネジャーとして現場でよく聞く高齢者が日常生活で感じる困難についてランキングを行い内容を考察し解決策を提案している記事となります。
高齢者の不安とその理由
高齢者が日常生活で抱える不安の中でも特に多いのが「経済的な不安」「健康への不安」「孤独感」です。これらの不安はそれぞれ異なる背景と要因があり、心理的・物理的な負担を増大させる要因となっています。高齢者が抱える生活の問題は多岐にわたり、日常生活を制限する要因となりがちです。ここでは、具体的な生活上の課題と、その心理的・物理的負担について深掘りして考察します。
経済的な不安
年金生活を送る高齢者にとって、日々の生活費や医療費の増加は大きな懸念です。物価上昇や年金の不十分さが原因で、生活の質を維持することが難しく感じる場合も多く、将来的な生活の安定を心配する声も聞かれます。
経済的制約による生活の制限
限られた年金収入で生活する高齢者は、必要な物品の購入やサービスの利用に対する選択肢が狭まり、生活の質が低下する恐れがあります。特に、介護や医療サービスが必要になった場合にその負担が重くのしかかりがちです。
健康(病気)への不安
年齢を重ねることで体力や免疫力の低下、慢性的な病気が増えるため、日常的な健康維持が大きな課題になります。病気になった場合の治療費や介護の必要性が不安要素となり、身体的な衰えを感じると同時に、これが心理的なストレスにもつながります。
身体的な衰えに伴う悩み
高齢になると、体力や筋力の低下、視力や聴力の変化が顕著になり、それが日常生活での動きづらさや不安につながります。例えば、階段の昇り降りが困難になったり、視覚や聴覚の低下で家の中での転倒リスクが増したりします。
社会的つながりの希薄化と孤独感
家族や友人と距離が離れ、また周囲との関係が薄くなると、社会的孤立が深刻になります。この孤独感は心理的ストレスを引き起こし、健康にも悪影響を与える可能性があります。孤独を感じることで、自己肯定感の低下やうつの症状が現れる場合もあります。このため、地域コミュニティや支援の手が届きづらい環境にある高齢者にとっては深刻な問題です。
高齢者が抱えるこれらの問題に対し、私たちはどのように支援や環境改善ができるか、今後の対策やサポートが必要です。
日常生活での高齢者の困りごとランキング
体験談としてですが、高齢者が抱える日常生活の課題として「機械の使い方」「買い物」「移動」「家事」「健康管理」が特に大きな負担であることが分かっています。それぞれが具体的にどのような形で困りごとになっているのか、以下に説明します。
5位:最近の機械の使い方がわからない
高齢者にとって、マイナンバーカードやスマートフォンやタブレット、家電などの新しい機械を使うことは難しい場合が多いです。これは、操作方法が複雑だったり、画面やボタンが見にくかったり、わかりにくい言葉が使われていたりするためです。
4位:買い物の不便
高齢者にとって、重い荷物を持つことや複数の店舗を回ることが難しくなるため、日々の買い物が負担になるケースが増えています。特に交通機関が発達していない地域では、買い物へのアクセスが限られていることもあります。
3位:移動の困難
身体機能が低下することで、公共交通機関の利用や自動車の運転が難しくなり、自由な移動が制約されます。この結果、外出が少なくなり、社会的なつながりが減少してしまうことも多いです。
2位:家事の負担
下肢筋力の低下や脳梗塞などの後遺症など疾患や症状の影響で掃除や料理、洗濯などの家事も、高齢者には体力的な負担が大きい作業になってしまいます。重い掃除機をかけたり、高い場所の掃除をしたりすることが難しく、生活環境の整備が十分にできことが増えてきます。
1位:健康管理の難しさ
高齢者が必要とする定期的な健康チェックや服薬管理を本人が行うことが難しいケースがあり、これらが悪い意味で相互作用し病気の進行が進むことなどもあります。また、病院への通院が必要な場合でも、交通や身体の問題で通院が難しいケースも増えてり支援方法を検討していく必要性があります。
高齢者に困っていることと私たちにできること
高齢者が抱える日常生活の困難を軽減するためには、家族や地域社会の支援が不可欠です。ここでは、高齢者が安心して生活できる環境を整えるために必要なサポートの意義や、具体的な支援策について詳しく紹介します。
家族や地域の支援が必要な理由
高齢者が安全かつ安心して暮らすためには、家族や地域社会の協力が重要です。その理由と支援の意義を以下に解説します。
安全と安心の確保
高齢者が日常生活を送る中で、転倒や病気の発症といったリスクが高まります。家族や地域の人々が定期的に安否確認を行うことで、異変があれば早急に対応することができ、緊急事態を未然に防ぐことができます。例えば、地域の見守りサービスなども、身近な人々が高齢者を支える一助となります。
心理的サポートと孤独感の軽減
高齢者の孤独感は、健康状態にも影響を及ぼすことが多いです。家族や地域コミュニティが定期的に訪問したり、話し相手になったりすることで、心理的な安心感が得られます。近隣住民同士が顔を合わせる交流の場を設けることや、ボランティア活動を通じて見守りの輪を広げることも有効です。
生活の質向上
家族や地域が高齢者のニーズを理解してサポートすることで、健康管理や生活環境の改善が期待できます。例えば、家族が健康管理や日常の買い物を手助けすること、地域が移動支援を行うことで、生活の質を向上させることが可能です。
高齢者のニーズに応じた生活支援策
高齢者が安心して暮らせる環境を整えるためには、個々のニーズに合わせた支援が必要です。以下に、具体的な支援策を紹介します。
訪問介護サービスの活用
訪問介護サービスでは、介護士が自宅に訪問し、日常生活をサポートしてくれます。例えば、入浴やトイレの介助、食事の用意、服薬管理など、家庭での生活を支える基本的な支援が受けられます。定期的な訪問により、身体的なケアだけでなく、介護士とのコミュニケーションを通じて孤独感を和らげることも可能です。
地域のサロンや交流活動の推進
地域社会の中でサロンや交流会を設けることで、高齢者が社会とつながる場を提供できます。こうした活動を通じて、他の高齢者と交流し、健康相談や生活の工夫を共有する機会が得られます。趣味活動や健康講座も取り入れることで、充実感や生きがいを見出しやすくなります。
移動支援サービスの導入
高齢者が自らの力で外出することが難しい場合、地域のボランティアや自治体の移動支援サービスが役立ちます。通院や買い物など、日常的な外出をサポートする仕組みがあることで、生活圏を広げ、自由に行動できる機会が増えます。地域の送迎サービスやバスの増便も、移動支援の一環です。
高齢者のニーズに応じた医療面での支援策
高齢者の医療支援には、自宅でのケアを可能にする「訪問診療」「訪問看護」、そして「薬剤師による薬の配達」などのサービスがあり、それぞれが高齢者の生活や健康を支える重要な役割を果たしています。ここでは、それぞれのサービスの内容やメリットについて詳しく解説します。
訪問診療の活用
訪問診療は、医師が定期的に患者の自宅を訪問し、診療や健康管理を行うサービスです。病院やクリニックに通うことが難しい高齢者にとって、自宅で医療を受けられることは大きな安心材料となります。
サービス内容
訪問診療では、主治医が定期的に自宅を訪問し、患者の症状に応じて診察や治療を行います。検査や診療はもちろん、健康状態の確認や必要に応じて処方箋の発行も行います。また、必要に応じて血液検査や心電図などの医療検査も行える場合があります。
メリット
訪問診療を受けることで、通院が難しい高齢者や寝たきりの方も、定期的な医療チェックを受けられます。また、医師が生活環境を直接見ながらアドバイスできるため、日常の健康管理や生活習慣の改善もサポートしやすくなります。さらに、緊急時の対応も相談しやすく、家族にとっても安心感があります。
訪問看護
訪問看護は、看護師が自宅を訪問し、日常生活の支援や医療的ケアを提供するサービスです。医療面での管理が必要な高齢者にとって、訪問看護は日常的な健康管理や急な対応においても重要な役割を担っています。
サービス内容
訪問看護では、看護師が定期的に訪問し、バイタルサインのチェック(血圧や体温、脈拍など)や病気の管理、服薬の確認、リハビリテーションのサポートなどを行います。また、入浴介助や褥瘡(床ずれ)のケア、在宅酸素療法の管理なども含まれるため、医療的なサポートが必要な方に適したサービスです。
メリット
医師の診療と連携して、看護師が日々の健康状態を把握し、変化があれば速やかに医師に報告できる点が大きな利点です。また、リハビリや体力の維持を支援することで、身体機能の低下を予防できるため、高齢者ができるだけ自立した生活を送れるようサポートします。訪問看護師は高齢者や家族とのコミュニケーションも密接に行うため、相談しやすい存在です。
薬剤師による薬の配達サービス
薬剤師による薬の配達サービスは、薬の管理や服薬指導を含むサービスで、高齢者が薬を適切に使用できるようにするものです。特に、高齢者が一人での薬の管理が難しい場合や、交通手段が限られている場合に役立ちます。またお薬カレンダーに仕分けなども行ってくれます。
サービス内容
薬剤師が高齢者の自宅を訪問し、薬を直接配達するほか、薬の保管方法や服薬指導を行います。また、飲み忘れ防止のための工夫や、複数の薬を服用している場合の飲み合わせチェック、服薬カレンダーの用意など、日常的に服薬管理をサポートします。
メリット
薬の配達に加えて、薬剤師からの指導により、薬を適切に服用できるため、治療の効果が高まり、薬の飲み過ぎや飲み忘れなどのリスクが軽減されます。また、薬剤師が定期的に訪問してくれるため、薬に関する相談や体調の変化を伝えやすくなり、必要があれば医師との連携も可能です。
訪問診療・訪問看護・薬剤師の薬配達の相乗効果
訪問診療、訪問看護、薬剤師の薬配達サービスは、それぞれが異なる側面から医療支援を行うため、組み合わせて利用することで高齢者の健康と生活の質を向上させる効果が期待されます。医師・看護師・薬剤師が連携して支援を行うことで、日常の健康チェックから治療、服薬管理まで、包括的にサポートが可能になります。高齢者の健康状態にあわせて、最適なサービスを組み合わせることが重要です。
このように、医療面での在宅支援を利用することで、高齢者が住み慣れた自宅での生活を続けやすくなり、安心感が得られるとともに、家族の負担も軽減されます。
高齢者の生活支援で考慮すべき対策
高齢者の生活支援を実施する上で、効率的かつ持続的な支援を実現するために考慮すべき点や、支援を進める際の課題とその解決法をまとめました。
高齢者のプライバシーと自尊心の尊重
支援が行き過ぎると、逆に高齢者が「自分のことが自分でできない」と感じてしまう場合があります。そのため、サポートの内容や頻度に配慮し、自尊心を尊重する姿勢が必要です。できる範囲の家事や活動を本人に任せ、必要な部分のみサポートすることで、プライバシーを保ちながら支援を提供できます。
支援者の負担軽減
家族や地域の支援者に過度な負担がかかると、長期的な支援が困難になります。そのため、地域や自治体が協力し、支援活動に参加するボランティアやサポートの輪を広げることが重要です。また、支援者同士の交流や定期的な相談会を設けることで、支援側のストレス軽減にもつなげることができます。
多様なニーズに対応する柔軟な支援体制
高齢者は人それぞれ異なる生活スタイルや健康状態、環境にあります。そのため、支援内容も画一的ではなく、柔軟な対応が求められます。行政や支援団体が支援策を整備する際には、幅広い年齢層の意見を取り入れ、地域に応じた施策を実施することが大切です。
まとめ
高齢者が日常生活で抱える困難には、「経済的な不安」「健康への不安」「孤独感」が代表的です。年金生活者は物価上昇と医療費増加に悩み、身体機能の低下からくる健康管理も大きな負担となっています。
特に多く聞かれる日常の困りごととしては、機械操作の難しさ、買い物の不便、移動の制限、家事の負担、健康管理の難しさが挙げられます。これらに対し、訪問介護や地域サロン、移動支援サービス、医療サポートなどの地域や家族による支援が効果的です。
高齢者の生活にとって家族や地域社会が支援の手を差し伸べることが欠かせません。支援の内容や方法は、個々のニーズや生活環境に応じて調整し、ニーズに応じた柔軟な対応と長期的な支援の持続と高齢者の生活の質向上を目指していくことが重要です。