はじめに
高齢者は、若年層に比べて体の水分量が少なく、かつ、のどの渇きを感じにくいため、脱水症状になりやすい傾向があります。脱水症状は、様々な健康問題を引き起こし、場合によっては命に関わることもあります。
この記事では、高齢者の脱水症状を防ぐために、水分補給の重要性、1日の摂取量、おすすめの飲み物、脱水症状のサインなど、知っておくべき情報を詳しく解説します
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なぜ高齢者は脱水になりやすいのか?
- 体の水分量が減少する: 加齢とともに筋肉量が減り、体内に水分を蓄える量が減少します。
- 腎臓機能の低下: 腎臓の働きが低下すると、尿量が増え、体内の水分が失われやすくなります。
- のどの渇きを感じにくい: 年齢とともに、のどの渇きを感じにくくなるため、水分不足に気づきにくいことがあります。
- 意図的に水分を減らしている:トイレに行くのが億劫になり回数を減らすために、意識的に水分補給を少なくしている。
- 食事量の減少:朝昼夕の食事量の減少により食物からの摂取する水分量が不足している場合がある。
高齢者が脱水になりやすい理由を踏まえ介護支援者として高齢者の脱水予防の視点が重要になります。
脱水症状のサインを見逃すな!
脱水症状は、初期段階では自覚症状が乏しいこともありますが、進行すると以下の症状が現れることがあります。下記のの症状が見られた場合は、早めに医師に相談しましょう。
- 倦怠感、だるさ
- めまい、ふらつき
- 頭痛
- 口渇
- 尿量の減少
- 便秘
- 皮膚の乾燥
- 体温の上昇
- 意識混濁
脱水症状からの身体への影響と病状悪化について
脱水症状は、体内の水分が不足することで起こる状態です。特に高齢者は、体の機能が低下しているため、若年層に比べて脱水症状になりやすく、放置すると様々な臓器や器官に影響を与え、様々な病気を引き起こす可能性があります。
脱水による各病気との関連性
- 熱中症:
- 体温調節が難しくなり、体温が上昇します。
- 汗を大量にかくことで、体内の水分と塩分が失われ、体温がさらに上昇しやすくなります。
- 脱水は、熱中症の発症リスクを大幅に高めます。
- 症状の発見が遅れ放置して過ごしてしまうと熱中症により生命にかかわることもあります。
- 脳梗塞、心筋梗塞:
- 血液がドロドロになり、血栓ができやすくなります。
- 血液の粘度が高まり、血管が詰まりやすくなります。
- 脳の血管が詰まると脳梗塞、心臓の血管が詰まると心筋梗塞が起こります。
- 尿路感染症:
- 尿量が減ると、細菌が尿中に増殖しやすくなります。
- 尿道や膀胱に細菌が感染しやすくなります。
- 腎機能の低下:
- 腎臓は、血液をろ過して尿を作る働きをしています。
- 脱水状態が続くと、腎臓に負担がかかり、腎機能が低下する可能性があります。
- 便秘:
- 腸内の水分が不足すると、便が硬くなり、排便が困難になります。
- 腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)が低下し、便秘の原因となります。
脱水による身体への影響
これらの病気が引き起こされるのは、脱水によって以下のような身体への影響があるからです。
- 血液量の減少: 血液量が減ると、血液がドロドロになり、血圧が低下します。
- 体温調節機能の低下: 汗をかいても、体内の水分が不足しているため、体温を下げることが難しくなります。
- 腎臓への負担増加: 腎臓は、血液をろ過して尿を作る働きをしています。脱水状態では、腎臓に過度の負担がかかり、機能が低下する可能性があります。
- 腸内環境の悪化: 腸内の水分が不足すると、腸内細菌のバランスが崩れ、便秘を引き起こす可能性があります。
高齢者の1日の水分補給量は?
高齢者の1日の水分摂取量は、個人差がありますが、食事から摂取する水分量を除いて、1000~1500mlが目安です。ただし、暑い日や運動をした日などは、より多くの水分が必要になります。
1日に必要な水分量(飲物経由)=体重×1キロあたりに必要な水分量 | |
年齢 | 体重1キロあたりに必要な水分量 |
65歳〜 | 25ml/日 |
55歳〜64歳 | 30ml/日 |
〜54歳 | 35ml/日 |
高齢者に合った飲み物とは?
- 水: 水は、最もシンプルで安全な水分補給の方法です。
- 麦茶: 利尿作用が少なく、熱中症予防にも効果が期待できます。
- 経口補水液: 電解質と糖質がバランスよく含まれており、脱水症状の回復に役立ちます。
水分補給と共に塩分補給を忘れずに
暑い季節や運動をしている時、私たちの体は大量の汗をかきます。汗と一緒に失われるのは水分だけではなく、塩分(ナトリウム)も含まれています。水分補給はもちろん重要ですが、同時に塩分補給も欠かせないポイントです。
塩分補給の重要性
塩分(ナトリウム)は、体内の水分バランスを保つために必要不可欠なミネラルです。汗をかくことでナトリウムが失われると、電解質のバランスが崩れ、筋肉の痙攣や疲労、最悪の場合、熱中症を引き起こすことがあります。
適切な塩分補給方法
- スポーツドリンクの活用:
市販のスポーツドリンクには、水分と共にナトリウムが含まれています。運動後や長時間の屋外活動の際には、これらを活用することで手軽に塩分補給が可能です。 - 塩タブレットの利用:
塩タブレットは、コンパクトで持ち運びが簡単な塩分補給の手段です。特に大量の汗をかく場合や、スポーツドリンクを飲む機会が少ない場合に有効です。 - 塩分の摂取できる食事を摂る:
食事には、適度に塩分を含むものを選びましょう。おにぎりや味噌汁、梅干しなどが手軽に塩分を補給できる食品です。
注意点
- 過剰摂取のリスク:
塩分は必要ですが、過剰に摂取すると高血圧などの健康問題を引き起こす可能性があります。適量を守りましょう。 - 個々のニーズに合わせる:
塩分の必要量は個々の体質や活動量により異なります。自分の体の状態や活動内容に応じて適切な量を摂取することが大切です。
脱水症状を防ぐ食事とは?
水分補給は飲み物だけでなく、食事からも行うことができます。水分を多く含む果物(スイカ、メロンなど)や野菜(キュウリ、トマトなど)、スープなどを積極的に摂りましょう。
高齢者が水分を摂りづらい原因対策
- 飲み込むのが難しい: ペースト状の食品や飲み物に変えたり、体を起こすのが難しい場合などはストローを使ったりするなど工夫しましょう。
- 味に飽きる: さまざまな種類の飲み物や、風味豊かな食品を組み合わせるなど、工夫しましょう。アイスクリームやゼリーなど
- トイレが近いのが気になる: トイレなどを気にする高齢者の方がいてますが、必要時はリハビリパンツなども活用しながら支援者の声掛けの注意喚起とトイレ後は小まめに少量ずつ飲むようにしましょう。
高齢者の水分補給をサポートするグッズ
- 持ち運びやすい水筒: 外出時やベッドサイドにもおき、手軽に水分補給ができます。
- 水分量を測るコップ: 1回の摂取量を把握しやすくなります。
- 水分補給の記録シート: 1日の水分摂取量を記録することで、水分不足に気づきやすくなります。
高齢者の水分補給をサポートするサービス
高齢者の水分補給は、健康維持に欠かせない重要な要素です。しかし、高齢者の方の中には、様々な理由で十分な水分を摂取できていない方もいらっしゃいます。介護保険のサービスなどを活用し定期的に水分補給を行っていきましょう。
- 訪問介護サービス:
- 介護者が定期的にご自宅を訪問し、水分補給や食事介助を行います。
- 個々の状態に合わせた水分量や頻度で、飲み物の提供や食事の際の水分摂取のサポートを行います。
- 介護者が水分摂取の記録をつけ、状態の変化に気づきやすくなります。
- 通所介護(デイサービス):
- 日中の時間を施設で過ごし、食事や入浴などのサービスを受けながら、スタッフのサポートのもと水分を摂取できます。
- グループで行う水分補給の時間や、個別の飲み物の提供など、様々な方法で水分摂取を促します。
- 他の利用者との交流を通して、食事を楽しむことができ、自然と水分を摂れる機会が増えます。
- 栄養士による食事指導:
- 栄養士が、一人ひとりの状態に合わせた食事内容や水分摂取方法を指導してくれます。
- 食事のメニューや飲み物の種類、量などをアドバイスし、バランスの取れた食事と水分摂取をサポートします。
水分補給をサポートする介護保険サービスを選ぶ際は、地域の包括支援センターやケアマネジャーにご相談ください。
高齢者の水分補給に関する注意点
- こまめな水分補給: 一度に大量の水分を摂取するのではなく、こまめに少量ずつ水分を摂取することが大切です。
- 飲み物の種類: 水だけでなく、お茶、果汁、スープなど、様々な種類の飲み物を用意しましょう。
- 温度: 冷たい飲み物だけでなく、必要時は温かい飲み物も用意しましょう。本人に合った適温で水分補給を促してみて下さい。
- 味付け: お茶などが好ましいですが、認知症などが進行し口に好みの物しか入れない場合は本人の好みの飲料水を準備し提供しましょう。糖尿病などある方は医師や看護師と相談し本人に合う水分補給方法を相談してみましょう。
- 環境: 涼しい場所で、リラックスできる環境で水分を摂取できるようにしましょう。
まとめ
高齢者の水分補給は、健康維持に欠かせない重要な要素です。脱水症状を防ぐために、こまめな水分補給を心がけましょう。もし、水分補給について何か不安なことがあれば、医師や栄養士・ケアマネージャーなどに相談し外部からのサポートも重要になります。高齢者の皆様の生活の質が低下しないように支援を心がけていきましょう。