スキルアップにつて

介護実習の実習目標例と具体的な指導ポイント

介護実習とは

介護実習とは、介護福祉士や介護職員を目指す人が、実際の介護現場で介護業務を体験しながら学ぶ実践的な学習の場です。主に介護福祉士養成校や専門学校、大学の介護福祉学科などのカリキュラムの一環として行われ、学生が理論だけでなく実務スキルや現場対応力を養うための重要なプロセスです。

実習を通じて介護技術の習得と理念を学んでいきましょう。介護実習のなかで目標のネタ切れや曖昧な目標などになる場合もあります目標に対してポイントをしることで実習を充実させることができますので学んでいきましょう。

基本的な介助技術の習得

食事、入浴、排泄、移動などの日常生活を支援する介助技術を、実際に現場で実践します。安全性や快適性を考慮しながら、介助の方法を学ぶことが重要です。

利用者とのコミュニケーション

利用者と直接触れ合うことで、ニーズや気持ちを理解し、適切なコミュニケーション方法を学びます。表情や声のトーン、姿勢など、利用者に寄り添った対応が求められます。

観察力の向上記録の作成と報告

利用者の体調や行動、介護内容を記録する業務を体験します。これは、他の職員と情報を共有し、利用者の状態を把握するために欠かせない作業です。

職員からの指導

実習先の施設の職員から、介護技術や考え方、利用者への接し方など、実践的な指導を受けます。職員の働き方やチームワークの重要性を目の当たりにする機会でもあります。

施設の運営や業務の理解

介護施設の運営方法や他職種との連携についても学びます。例えば、看護師や理学療法士、ソーシャルワーカーなどとの協力がどのように行われているかを知ることができます。

介護実習で目標のネタ切れが起きる理由とは?

介護実習では、学びの成果を上げるために日々目標を立てることが求められます。しかし、多くの実習生が「目標のネタ切れ」に陥る経験をしています。この現象が起きる背景には、いくつかの理由が考えられます。

1. 具体性に欠けた目標設定

最初はやる気に満ち溢れ、「利用者に笑顔を届けたい」や「安全な介助を行う」といった目標を立てがちです。しかし、これらの目標は抽象的すぎて次第に実行可能な具体性が欠けることに気付きます。日々の実習を通して、目標が現実的でなくなり、ネタ切れに陥る原因になります。

2. 自己評価の困難さ

目標を達成したかどうかを判断するためには、自己評価が不可欠です。しかし、経験の浅い実習生にとっては、自分の行動を客観的に振り返ることが難しい場合があります。そのため、「昨日と違うことを何かしよう」と考え続けても、具体的な改善点が見つからず、結果として目標が枯渇します。

3. 周囲とのコミュニケーション不足

介護実習では、指導者や現場の職員からのアドバイスが目標設定のヒントになります。しかし、実習生が遠慮して質問できない場合や、指導者からの具体的なフィードバックが少ない場合、自分一人で目標を考えるのが難しくなり、ネタが尽きてしまうのです。

4. 負担感の増大

介護実習の中盤以降になると、体力的にも精神的にも疲れが蓄積し、「目標を考えること自体が負担」と感じることがあります。この状況では、目標を設定することが義務のように感じられ、次第に新しいアイデアが浮かばなくなります。


以上のように、介護実習で目標のネタ切れが起こるのは、経験不足や環境要因が関係しています。しかし、適切な指導や自己分析を行うことで、この課題を乗り越えることが可能です。例えば、以下のような工夫が効果的です。

  • 現場職員に相談し、具体的なアドバイスをもらう
  • 一度立てた目標を細分化し、実行可能な内容に絞る
  • 目標を毎日更新するのではなく、数日単位で設定する

介護学生の目標に対して明確に答えるためのポイント

介護学生にとって目標の設定は成長の基盤となりますが、その目標を明確にサポートすることは指導者にとって重要な役割です。学生が目標に対して迷いを感じることなく、実習を充実したものにするためには、次のような工夫が求められます。

1. 学生の目標を具体的に把握する

学生が立てた目標が抽象的である場合、それを具体化するための質問を行います。例えば、

  • 「利用者に笑顔になってもらいたい」という目標には、「笑顔になってもらうために具体的にどのようなケアや声かけを行う予定ですか?」と質問することで、目標を実行可能なレベルに落とし込む手助けができます。

2. 目標が現場のニーズと一致しているか確認する

学生の目標が現場の実情や利用者のニーズに合っていない場合、実現が難しくなります。指導者としては、学生に以下のような視点を提供します。

  • 「この目標は○○さん(利用者)の状況にどのように役立つと思いますか?」
  • 「現場の職員が行っている同じケアの例を観察してみて、それを参考にしてはどうでしょうか?」

3. 目標達成のプロセスを明確化する

学生に目標達成の具体的なプロセスを提示することが効果的です。例えば、

  • 目標: 「安全な移乗介助を行いたい」
  • 指導者の対応: 「安全な移乗介助のポイントを3つ挙げ、それぞれを今日の移乗の中でどのように実践するか考えてみましょう」

4. 達成可能な範囲に目標を調整する

初めての実習では、学生が目標を高く設定しすぎて挫折する場合があります。そのため、目標を達成可能なレベルに調整することが重要です。例えば、

  • 「1日ですべて完璧にする必要はありません。今日は動作時の安全の声かけだけに集中してみてはどうですか?」と提案します。

5. フィードバックを適切に提供する

学生が目標に向かって取り組んだ後には、具体的かつ建設的なフィードバックを行います。

  • 「今日の移乗では利用者に対して適切に声かけができていました。ただし、タイミングをもう少し工夫すると、利用者がもっと安心感を得られるかもしれません」

指導者が目指すべき姿勢

学生が目標を立て、それを達成していくプロセスは、介護職としての基礎を築く大切なステップです。指導者は単に答えを提供するのではなく、学生自身が考え、成長できるような支援を行うことが求められます。学生と対話を重ねながら、目標の達成に向けて共に歩む姿勢が、効果的な指導につながるのです。


実習目標例と指導へのポイントが下記に記載しておりますので参考にしてみてください。

実習目標例1:基本的なケアスキル・介護技術の習得

介護実習において基本的なケアスキルを習得することは、利用者の生活の質を向上させ、安全で快適なケアを提供するための基盤となります。以下に、具体的実習目標例と目標からの指導ポイントを表となっております。

実習目標例学生指導のポイント
体位交換を正しい手順で行う介護技術の視点から姿勢保持の重要性を説明する。
実際の手技を実演し、学生にも実践させてフィードバックを行う。
入浴介助を安全・快適に実施する入浴介助の流れを紙に書き出して共有する。温度管理やプライバシー配慮について具体的に説明する。また、入浴時のリスク・インシデントなども指導していく。
食事介助で利用者の状態に合わせたケアを行う嚥下機能の確認方法や食形態の選択理由を解説する。
介助時の声掛けやタイミングの重要性を指導する。
排泄介助のプライバシーを守るトイレ誘導の仕方や声掛けのタイミングをロールプレイングで練習させる。
排泄記録の取り方を教える。必要時は医療との連携の行い方を伝える。
安全な移乗介助を行う力の使い方や福祉用具の使い方を実際に見せる。
バランスが取れる姿勢を学生自身が体感するようにする。
利用者と信頼関係を築く利用者に関心を持つ質問例を提示する。 利用者の話を聴く姿勢(アイコンタクトや相づち)を意識させる。
認知症の方に適切な対応をする認知症ケアの基本的な知識を提供する。
実際のケースで対応方法を一緒に考え、フォローする。
状態変化を観察し、記録する観察のポイント(表情、皮膚状態、食事量・排泄など)をリストアップさせる。
記録方法を一緒に練習し評価していく。
スタッフ間で情報共有を正確に行う申し送りの場に同席させ、実際の例を示す。 必要事項を簡潔に伝える練習を行う。
利用者の尊厳を守るケアを実践するプライバシー配慮の重要性を具体例で説明する。
利用者の意向や意見を尊重する姿勢を見せる。
急変時の対応を理解するAEDや応急処置の基本を講義形式で教える。 模擬緊急時のシミュレーションを実施する。
実習の振り返りを行い、改善点を明確にする日報や実習記録を丁寧に確認し、改善点を一緒に考える。
振り返りシートや質問を通して理解を深めさせる。

実習目標例2:コミュニケーションスキルの向上

コミュニケーションスキルの向上は、介護現場で多岐にわたる場面で役立ちます。まず、利用者との信頼関係を築くうえで重要です。適切な声掛けや傾聴を行うことで、利用者は安心感や信頼を抱き、日常生活への意欲が高まります。

また、利用者の表情や仕草から体調や感情の変化を察知する能力が向上し、早期の対応が可能となります。特に認知症の方やコミュニケーションが難しい方には、非言語的な表現や優しい声掛けが有効で、拒否や不安を軽減する効果がありますのでコミュニケーション技術を向上していきましょう。

実習目標例指導ポイント
利用者に合わせた声掛けを行う利用者の年齢、認知機能、性格に応じた声掛けの仕方を具体例で示す。
言葉遣いやトーンの使い分けを指導する。
利用者の話を傾聴する傾聴の姿勢(うなずき、相づち、アイコンタクトなど)を説明し、ロールプレイで練習する。
利用者の表情や態度から感情を察する実際の利用者とのやり取りを観察させ、感情の変化を記録する練習を行う。
感情を推測する際の注意点を説明する。
利用者が安心感を持てるように接する笑顔や落ち着いた態度の重要性を説明し、利用者の反応を観察させる。
ポジティブな言葉を意識させる。
非言語コミュニケーションを活用する表情、ジェスチャー、身振りの重要性を解説し、実際に利用者との場面で活用させる。
利用者の意向を引き出す質問をする開かれた質問(オープンクエスチョン)の例を挙げて説明する。
質問の仕方による違いをロールプレイで体験させる。
認知症の方への対応を学ぶ認知症の特徴を解説し、わかりやすく簡潔な言葉で話す練習をする。
対応中の落ち着いた態度の保ち方を指導する。
家族との円滑なコミュニケーションを図る家族の感情に寄り添った対応例を共有する。 質問や意見に対する適切な受け答えの方法を練習する。
他職種との連携を意識した会話をする チーム内での情報共有のポイントを説明する。
実習中にスタッフとの連携方法を体験させる。
利用者の文化や価値観を尊重して話す利用者の生活背景や趣味、価値観を調べ、会話の中で触れる方法を学ぶ。過去のエピソードを聞き出す練習をする。
利用者の気持ちに寄り添う言葉を使う傾聴と共に共感的な言葉遣い(「大変でしたね」「それは辛いですね」など)の例を紹介し、使うタイミングを指導する。
利用者の言葉を繰り返して確認するアクティブリスニング(利用者の言葉を繰り返す)の方法を説明し、実践で活用する。
利用者の拒否反応に適切に対応する拒否反応が起きた際の対応例を提示し、具体的な手順を説明する。
焦らず対応する姿勢を身に付けさせる。
利用者に感謝の気持ちを伝える利用者への感謝を言葉で表現する方法を指導する。
実際の会話の中で感謝の気持ちを伝える練習を行う。
コミュニケーションのなかで変化を学ぶ利用者とのコミュニケーションを通じて気づいた変化や感想を定期的に報告させる。
報告時の簡潔な表現を練習する。

実習目標例3:観察力の向上と介護記録の習得

観察力の向上は、介護現場で利用者の安全と生活の質を守るために不可欠です。利用者の健康状態や感情、生活の変化を早期に察知することで、適切なケアや医療対応を迅速に提供できます。また、食事や排泄、動作の様子を観察することで、誤嚥や転倒などのリスクを未然に防ぐことが可能です。

さらに、利用者の好みや個性を理解するためにも観察力は重要で、これにより利用者に寄り添ったケアが実現します。観察力は、利用者だけでなく家族や他職種との情報共有を円滑にし、チームケアの質を高める基盤となります。そのため、観察力の向上は介護の質を向上させるための基本的なスキルです。

以下に、「観察力の向上」に焦点を当てた実習目標例と指導ポイントを表にまとめましたので参考活用してみて下さい。

実習目標例指導ポイント
利用者の表情や態度から感情を読み取る利用者の顔の表情や動作を観察する視点を教える。
感情変化に気づいた際の声掛けや対応方法を指導する。
利用者の健康状態の変化を見つける顔色、食欲、睡眠の質など具体的な観察ポイントを提示する。
異常があればすぐに報告する重要性を説明する。
利用者の言動を正確に記録する観察した内容を簡潔かつ具体的に記録する方法を教える。
客観的な表現を使用する練習をさせる。
利用者の動作を注意深く観察する歩行時や食事中の動作を観察し、リスクやサポートの必要性を見つける方法を指導する。
環境の安全性を確認する転倒や事故を防ぐために、室内の配置や動線をチェックする方法を教える。
不具合があれば即時に報告するよう促す。
他職種からの情報を観察に活用する他職種が提供する情報(看護記録、リハビリの報告など)を基に利用者の状態を総合的に観察する方法を学ぶ。
利用者の好みや癖を見つける食事やレクリエーションの際に利用者の好みや反応を記録し、サービスに反映する方法を指導する。
小さな変化にも気づく力を養う「普段と違う」点を見つける練習として、日々の状態と変化を比較する観察シートを活用させる。
利用者のコミュニケーション方法を理解する言葉以外のサイン(視線、ジェスチャーなど)を観察し、利用者の意図を汲み取る練習を指導する。
観察結果を基にした行動を提案する観察した結果を介助やケアの改善に活かす方法を議論し、実際に試してみる場を提供する。
利用者の生活パターンを把握する食事、排泄、睡眠などの生活リズムを観察し、利用者ごとの特徴を記録する。
周囲の人々との関係性を観察する利用者が他者とどのように接しているか観察し、社会的つながりを把握する練習を行う。
リスク要因を早期発見する転倒や誤嚥などのリスクを観察から見つける方法を具体例を交えて教える。
ケアの前後の変化を記録するケアを行った前後での利用者の変化を観察し、記録する練習を行う。

実習目標例4:利用者のQOL向上

介護において利用者のQOL(生活の質)を向上させることは、身体的健康だけでなく、心理的・社会的な幸福感を高めるために重要です。利用者が自分らしく生活を送るためには、尊厳を守り、自立を支援するケアが求められます。

例えば、趣味や好きな活動を取り入れることで、生きがいや楽しみを感じられる環境を提供できます。また、利用者一人ひとりの価値観や生活習慣を尊重し、個別に合わせたケアを行うことがQOL向上の鍵となります。さらに、適切なコミュニケーションや信頼関係の構築によって、安心感や自己表現の場を確保することも重要です。QOLを向上させる介護は、利用者の心身の安定を支え、豊かな生活を実現するための基盤です。実習目標を明確に立て利用所のQOL向上を目指し実習に取り組んでみましょう。

実習目標例学生指導のポイント
感染症予防の基本を理解し実践する手洗いや手指消毒の手順をデモンストレーションする。
感染症対策の基本的な知識(標準予防策など)を指導する。
個々に合わせた福祉用具の使用方法を習得する車椅子やスライディングボードなど、具体的な用具の使い方を指導する。
利用者の状態に合わせた選択方法を解説する。
利用者のニーズを正確に把握する利用者の言葉や表情を観察する視点を教える。
実際にコミュニケーションをとり、ニーズを聞き取る練習を支援する。
レクリエーションを計画・実施する利用者が楽しめる活動の例を挙げ、一緒に計画を立てる。
レクリエーション後に参加者の反応を振り返らせる。
職場でのチームワークを体験するスタッフ間のコミュニケーションを観察させ、必要な要素を話し合う。
自分から相談や提案をする練習を促す。
緊急時の報告・連絡・相談を行う具体的な緊急時のケースを挙げてシミュレーションを行う。適切な報告内容やタイミングについて指導する。
家族とのコミュニケーション方法を学ぶ家族面談や相談の際に適切な言葉遣いや態度を教える。
家族からの意見を受け止める姿勢を練習させる。
倫理的なジレンマに対応する方法を学ぶ倫理的配慮が必要な場面を想定し、一緒に考えるワークを行う。
判断基準となるガイドラインや施設ルールを共有する。
環境整備を自主的に行う-清掃や整理整頓の重要性を説明し、具体的な作業方法を指導する。
利用者が快適に過ごせる環境づくりを意識させる。
利用者の自立に向けた具体的な支援を考える生活動作の自立支援に繋がる介助方法を考えさせる。
自立を妨げない介護の工夫を教える。
職場のルールやマナーを遵守する実習先のルールやマナーについて初日にしっかりと説明する。
実習中のマナーを振り返り、改善点をフィードバックする。

介護実習後の自己評価と振り返り

実習後には、自分の実践内容を振り返り、良かった点や改善すべき点を自己評価します。これにより、自身の成長や課題を明確にすることができます。

介護実習は、座学で学んだ知識を活かすだけでなく、利用者やスタッフとの関わりを通じて人間関係の大切さや実践的な対応力を磨く場でもあります。この経験を通して、将来の介護職として必要なスキルと心構えを育むことが目的です。目標と指導のポイント振り返り介護職としての資質を磨いていきましょう。

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