高齢者と低栄養
65 歳以上の高齢者の低栄養傾向の者(BMI≦20 kg/m2)の割合は男性 10.3%、女性20.3%であり、この 10 年間で有意な増減はありませんが、年齢別にみると、男女とも 85 歳以上でその割合が高い傾向がみられます。(平成30年国民健康・栄養調査結果より)
「低栄養」とは健康的に生きるために必要な量の栄養素が足りない状況をいいます高齢になると摂食機能や消化機能の低下や疾病、その他社会的な問題から食事を十分に摂れなくなることがあるため低栄養に注意が必要です。
加齢にともなう筋力や筋肉量の減少に「低栄養」が加わることで、「フレイル(虚弱:加齢に伴って心身が衰え、要介護になる可能性が高い状態のこと)」へと状態を進行させ、「サルコペニア(筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下している状態のこと)」や「ロコモティブシンドローム(筋肉や関節・骨など運動器の衰えにより、歩行や日常生活に支障をきたす状態のこと)」を引き起こし、さらには寝たきりへと「負の連鎖」につながっていきます。
高齢者が低栄養に陥りやすい原因
高齢者が低栄養に陥りやすい理由は5つの要因があります。高齢者の状態や環境によって当てはまる要因が個々に違いますが低栄養に改善の為、原因を分析し改善を図っていきましょう。
- 貧困
- 独居(孤食)
- 孤独感
- 貧困
- 介護力不足
- 認知機能障害
- うつ
- 誤嚥、窒息の恐怖
- 消化管の問題(下痢、便秘)
- 嗅覚、味覚障害
- 食欲低下
- 臓器不全
- 炎症・悪性腫瘍
- 薬物副作用
- 歯科的、咀嚼の問題
- 咀嚼、嚥下障害
- 日常生活動作障害
- 疼痛
- 不適切な食形態の問題
- 栄養に関する誤認識
- 医療者の誤った指導
低栄養状態を防ぐ為の必要な栄養量はいくら?!
高齢者にとっての必要な栄養量はどれくらいなのでしょうか。必要なエネルギー量は食事摂取基準(2020年版)では次の表のように示されています。たんぱく質はフレイルやサルコペニアのお発症を予防するために少なくとも体重(㎏)当たり1.0g以上の摂取が望ましいとされています。その他、骨折予防のためにもビタミンDの摂取も推奨されています。
推定エネルギー必要量(kcal/)
性別 | 男性 | 女性 | ||
身体活動時間 | Ⅰ(低い) | Ⅱ(普通) | Ⅰ(低い) | Ⅱ(普通) |
65~74歳 | 2050 | 2400 | 1550 | 1850 |
75歳以上 | 1800 | 2100 | 1400 | 1650 |
身体活動レベルⅡは自立している。
レベルⅠは自宅でいてほとんど外出しない方に相当し高齢者で施設に自立に近い状態で過ごしている方にも適用できる値。
※身体活動レベルⅠの場合、少ないエネルギー消費に見合った少ないエネルギー量を維持することになる為、健康維持・増量の観点からは身体活動量を増加させる必要がある。
たんぱく質の目標量(g/日)
性別 | 男性 | 女性 | ||
身体活動時間 | Ⅰ(低い) | Ⅱ(普通) | Ⅰ(低い) | Ⅱ(普通) |
65~74歳 | 77~103 | 90~120 | 58~78 | 69~93 |
75歳以上 | 68~90 | 79~105 | 53~70 | 62~83 |
腎疾患のある方は主治医や管理栄養士の指示に従ってください。
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」より改編
高齢者は何をどれだけ食べたらいい??
1日に「何を」「どれだけ」食べればよいか、その目安を示してくれるものに「食事バランスガイド」があり、食事の目安をコマの形で表しています。「何を」は、主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物の5つの料理区分で示し、「どれだけ」は、1日の目安をそれぞれの料理区分ごとに1つ、2つと「~つ(SV)」で数えます。(SVとはサービング(食事の提供量)の略です。)コマの上部に位置する料理区分ほど、摂取すべき量が多いことを示しています。
1日の食事量の目安は、性別・年齢・身体活動量によって異なります。
「食事バランスガイド」を使って、自分の適量を把握してみましょう。